下を向いて歩いていた。
ふと振り返ってみると、歩いてきた道の上に淡い色があった。
「この淡い色なんだっけ?」
もう少し歩いてみよう。
…少しして振り返るとその色は僕から放れないでついて来る。
「おかしいな?」
また歩く…
振り返る…
ついて来る。
ふと頭をよぎる。
「懐かしい色…」
「…そうか。」
『…ごめん。もうだめかもしれない。』
僕の冷たい心が小さく囁いた。
『遠くに来てしまった僕には…を幸せには出来ないかもしれない。』
くすんだ心がまた囁いた。
すると淡い色は、
『がんばって。』
って僕の心にまた色をくれた。そうだ…
とても優しい色。
僕の大好きな色。
そう。君の色…
まるで桜の花びらが僕の周りにだけ永遠に降り注いでくるようなそんな色。
落ち込んだとき勇気をくれるそんな色だ。
『またあいにくるね。』
って。
僕のカバンには君がくれた桃色の御守りが、何年経っても僕と君をつなぐ道をつくってくれていた。
「これでまた頑張れる…ありがとう。」
これでまた僕は前を向いて歩いていける。
火事