ぼーんやり。生徒玄関の階段に座って、扉の開け放された体育館を見ている。キュッキュッと聞こえるのはバスケ部が練習してるからだけど、私が見てるのはバレー部。
マイは高い身長と中学からバレーをやってきたこともあって、2年生になったとたんレギュラー入り。学年毎に決められるリーダーに去年も今年も選ばれてる。さすが。
バチン
激しい音がした。見えないけど、たぶんマイがばこーんと決めたんだろう。絶対敵に回したくない。
「お」
「お」
オウム返ししたのが私。最初に言ったのはタイチくん。マフラーなしのセーター。12月にしては薄着じゃない?
「待ち合わせ?」
「うん。友達。バレー部なの」
「あ、マイって人?あの人すごいよなー。俺らのクラス即負けたってのな」
9月にあったクラスマッチのことか。そりゃもーマイは強いんです。
「ってゆうか、ここで待ってんの?」
マフラー、手袋、帽子。完全防備です。
「中で待てば?」
「今日ね、雪が降るの。初雪」
待ってるんだって言ったらタイチくんは少し顔を赤くした。う、わ。私、かなり乙女ちっくなこと言ったよね。恥ずかしー・・・初雪が見たいってゆうか、絶対降るってあまりにも自信満々で言われたから確かめてやろうと思って・・・ってこれはこれで子供っぽすぎか。
「俺も待ってい?」
「え?マイ?」
「いや・・・初雪」
また赤くなってタイチくんが言った。なによー、けっこう可愛いじゃん。人は見かけによらずってか。
そう、タイチくんは180センチ。テニス部で日にやけていて、細身だけどがっちり系。
何も話さずっていうか話す暇もなく声がかかった。タイチくんに。1年生かな。セーター着てマフラーを巻いた女の子が3人。ブレザー着てる私から見れば身震いもの。若いってすごいなあ。
「あ?ああ、後輩だ」
テニス部かあ。部活やってるならマフラーあればいいのかもね。
「ごめん、行くわ。じゃ、風邪ひくなよ」
「うん、タイチくんも。じゃーねー」
ふわふわ手を振ったら女の子達にガン見されてた。ちょっと!あたし先輩だよ!?
少しして、マイが部活を終えた。
「うっわー、ありえんっ!」
上気して赤いほっぺたのマイはセーターを腰に巻いたブラウス姿。季節感!
「なしでしょー」
「やっぱ?」
そう言いながら、暑そうにしてマイが笑った。