馬車はすごいスピードを出しはじめた。
「すぐ後ろにいるぞ」
「何匹?」
「四匹だ」
その時一匹が馬車の上に飛び乗ってきた。タクトはすかさずその一匹を倒した。こんな調子で後ろにいたムシは四匹とも倒してしまった。
「もうスピードを落としてもいいよ」
「全部倒した?」と彼女が後ろを振り向いた。
「うん。逃げようとしたのに全部倒しちゃったよ」
「よかったー、そういえばあなた名前はなんていうの?」
「えっ、ああ、まだ言ってなかったっけ」すっかり忘れてた。
「名前はタクト・・・きみは?」
「わたし?わたしの名前はパール。宜しくね」
「宜しく。馬車から降りない?」
馬車からおりて改めて落ち着いて彼女の容姿を見てみると、髪は腰の辺りまであり、マントを羽織っている。身長はタクトより少しだけ小さいが歳は同じくらいだ。
「改めまして、はじめまして」
妙に元気良く挨拶してきた。とりあえず「はじめまして」と返した。
「わたしはね、この辺りの地域で行商人をやってるの、次いでだし何か買ってく?」
こんなタイミングで商売かと思った。そうしている間にも彼女は馬車の中身の整理を始めた。
「どうりで狭いと思った」
「当たり前でしょ。この馬車は商売用で、乗るためじゃないだから」と言いながらまだ整理をしている。
そんな中タクトの心には重いものがのし掛かってきた。
「ウェイトはなんで・・・」
「お友だちのこと?」馬車の奥の方で声がする。
「そう」
「ちょっと待ってね。説明してあげるから」
馬車の整理を終えてタクトに説明し始めた。
「あの男はルパスの国王に忠実な11人の手先の内の1人なの、彼は心を操る魔法を使うの、だから、その魔法にかけられたんだわ」
「その11人名前の総称がR11か。ムシも操られていたのかもしれないな。よくわかったけどなんでそんなに詳しいの?」
「わたしがオーシーに行った時にそんな話を聞いたの」
「ルパスのスパイはこんなところにもいたのか」
タクトは独り言を言った。
「なんて?」
「いいや、別に、何も」
旅の目的を話してもいいが、まだ完全に信用できない。
「さて、本題に戻しましょうか」
「本題?」
「さぁ、何が欲しい?」
彼女は馬車の前に立っていた。
パールにとっての本題はそれかと心の中で思った。