『篠原先生、ありがとうございました。ユカをお願いします。』
『はい。分かったわよ。』
そして――
あたし達は、保健室を後にした――
* * * * * *
その日の帰り道は――
2人にとって――
また何時もの帰り道――
『聖人。』
『ん?!』
『あたし‥‥聖人に言いたいコトがあるの。』
『うん。』
あっさり素直に返事をされると――
なんだか調子が狂っちゃう――
『あの‥‥。そ‥の‥‥。』
『何だよ?!言えよ!!』
『だから‥‥。あ、あたし以外の女の子のコトを‥‥あんな風に言われるのが、嫌‥‥だ。
さっき、ユカをおぶってたトキのコト‥‥。』
ハッキリ言い過ぎたかなって思ったから――
言うつもりでいた言葉を躊躇した――
『俺、なんか変なコト言った?!』
でも――
聖人の、その一言で――
前言撤回っっ!!
『言ったもん。“背中の感触”がどうとか‥‥。』
思い出したのか、
聖人は、少しの間を置いてから口を開いた。
『‥‥ただの冗談だろ。それ位のコトで怒るなよ。』
『それでも‥‥嫌だもん‥‥。』
自分が、こんなにもヤキモチ焼きだなんて思わなかった――
『ごめん‥俺、奈央を傷つけた?!』
そして――
聖人が、こんなにも素直だなんて思わなかった――
『ううん。あたしも聖人のコト‥‥“何考えてるのか分からない。”とか、結構酷いコト言ってるし。』
2人で歩く雪道が――
今日は少しザクザク音をたてていた――
『奈央――』
不意に呼ばれて、
大好きなヒトの顔を見上げた――
そして――
優しくキスをされた――
『俺が好きなのは、奈央だけ。
ずっと、ずっと、これからも――』
『うん。』
“ずっと、ずっと、これからも――”
嬉しくて――
また胸が苦しくなった――
『めっちゃ好きだからっっ。』
聖人はそう言って、
少し早歩きに、前を歩き出したんだ――
『待ってよぉ。』
あたしも、めっちゃ好きだよ――
ずっと、ずっと、これからもっっ!!