手でも首でもおでこでもいい。足のうらでもいいから、ずっと触れられていたい。永遠の命題。
人の心にはちょっとした隙間がある。
例えば、裕は亡くなったママに構ってほしい気持ちを抱えたまま、年上の人妻ばかりと寝る。
保高は娘が家を離れてからは、年下の女の子ばかりと付き合っている。思い通りなるからだろう。
私はそんな彼らと笑いながら寝る。時には囁きながら、怒りながら。甘いスパイスとしてSexを。
「泪てどういう意味?」
ん?
目を閉じたまま答えると、うしろから抱く腕に力が入った。
「なんでもない」
裕は拗ねるようにいう。私は甘く受け流す。
「涙、ていう意味。私よく泣くから。」
「泣くの?」
覗きこむように裕は言った。
「涙を見せたとき、女の子は素敵な嘘をつくの。でも、泣かない女の子は信用しちゃだめよ。」
「泪も俺の前で泣いてみてよ」
裕は目を逸らさない。
私は唇だけで微笑みながら言った。
「裕」
「ん?」
携帯がなっている。
「泣かないけど、私といると最高に楽しめるよ」
テーブルの上で震える携帯をとった。
「保高?」
「いまどこ?」
声が怒ってる。
「ごめんね、まだ出てないの。いまどこ?」
「マンションの前」
裕が私の背中を見つめてるのがわかる。
最高。
「今オートロック開けるわ。本当にごめんなさい。」
消え入りそうにおびえた声で私はオートロックの解除ボタンを押した。
「マジで。」
裕は急いで服を探し始めた。
私は微笑みながらガウンを羽織った。
チャイムが鳴った。ロフトの上の裕に静かにするよう合図をして、保高をリビングに通した。
「少しだけ待ってて」
「ああ」
スーツをソファーに脱ぎ捨て、保高は疲れたように言った。
「君も裕也もどうしてこんな聞き分けがないんだ」
「どうかしたの?」
香水を纏いながら私は聞いた。
「いまどき新しい母親を紹介するなんて必要ないと言って連絡がとれないんだよ」
「そうなの。残念ね。」
保高は私を引き寄せて、怒りをぶつけるように抱いた。
ロフトの上で見つめる裕と目が合って、私の目から大粒の涙が零れた。
私は幸せかもしれない。
昼は裕、夜は保高。
私はいつでも肌に触れていられる。