「ロキ、出発は明日だ。何か必要なものがあるんなら今日中に準備しといてくれ」
特に急ぎの用事は無いのだがロキとキーの身を案じてかキャプテンは出発の予定を早めることにした。
「あ…キャプテン?必要なものは無いんだが…」
何か引っかかることがあるらしい、ロキは外のほうを見ている。
「フレース!」
無口なロキの突然の一声に驚いたのも束の間、その後にすぐ羽音が聞こえ宿の前に何かが舞い降りた。
5人は宿の外に出た。
「フレース…フレースヴェルグか。世界樹に住むという『大鷲』」
キャプテンは少年のようにその舞い降りた大鷲をまじまじと観察し始めた。
「大鷲って…でか過ぎだろこれ…」
ソラが驚くのも無理はない。見上げる格好ではあるものの大鷲は興味深げに二階の女性客の部屋を覗いている。単に『でかい鳥』で片付けられないくらいのでかさだ。
「さすがにこれを船に乗せるのは無理っぽいわね…」
マミーはちょんちょんとフレースをつつきながらキャプテンに言った。
「乗せるのは無理だ。…だが」
「フレースは飛べる。船に乗せなくても大丈夫」
「そう言うことだ」
キャプテンは楽しそうにフレースに抱きついたり羽を軽く引っ張ったり、珍しいものや伝説となるといつもこうだ。
この日も夜遅くまでロキとキー相手に大好きなおとぎ話をしていた。