廃れた街の中心には広場がある。そこにも昔は店が立ち並んでいたが、今はどの店も閉まっており浮浪者の溜まり場になっていた。
広場の隅には小さい通路がある。
マーチは薄暗い通路を進むと行き止まりだった。床に大きな蓋だけがある。マーチは蓋を開け、穴の中に入った。穴の向こうはさらに暗くなっていた。蓋を閉め、マーチがレインコートのポケットからライトを取り出して灯りを付けると長い階段が現れた。
階段は地下に続いている。灯りを付けても長々と続く段差しか見えない。
銀色のドアに辿り着いたマーチはドアノブを掴む。ドアはスムーズに開かない。漸く開かれたドアの向こうには怪しげな、青白い小さな光が点々と浮かんでいた。
誰も居ないようだ。
それはコンクリートの床に不気味な影を落としている。マーチはその影をじっと見つめた。