「お前があんなことするなんて俺は思ってなかったぞランスォールよ。」
ラウフがランスォールの肩を叩きながら茶化す。
「うるせぇ。」
ランスォール自身、今まで真っ正直から戦う経験がほとんどなかった分あんな行動をとったことに対して驚いている。
「…イツキって子を追うんでしょう?」
「当たり前だ。」
そう言ってランスォールは大きく地図を広げた。
雪にも話に参加してもらおうと思い辺りを見ると三人から少し離れた所でうずくまり背を向ける雪がいた。肩が僅かに震えている。
もしかしたら泣いているのかも知れない。
「…雪、俺たちとこのまま来るか?俺たちといても苦しいだけかも知れない。」腕で目の辺りをごしごしと拭い顔を上げた雪の目には涙の跡がくっきりと残っている。
「いえ、連れていって下さい。
私にはもう…帰る家はないようですしね。」
雪は悲しそうに笑った。
「さ、それじゃあ早く次を決めましょ。」
「…だな。よし、じゃあしらみ潰しにここはどうだ?」そう言ってラウフが指差したのは隣村のニコラ。
田舎、と言われるに相応しい豊かな農村だ。
「ホントにしらみ潰しだな」「まあまあそう言うなや。今は少しの情報も欲しい。…そうだろう?」
こうして四人は【三種の神器】の一つ、盾を追ってニコラの村へと旅立った。
この後、自らの過去を知ることになるとはランスォールには知る術がなかった。