リリィは退屈していた。
マーチと別れてから全く車内から出ていない。
廃車の中はタオルくらいしか無かった。
リリィは欠伸をしながら廃車から出た。陽射しが眩しいので少し目眩がする。リリィは大きく伸びをして、廃車置き場を彷徨き始めた。
色褪せた埃っぽい廃車が何台もある。タイヤが欠落したものやガラスが割れたものも見られる。廃車の森をさまよっていると、がらくたの山を見つけた。
リリィはその山を漁ることにした。
日が傾き出した。
ココの酒場には灯りが付き、人も集まり出して賑やかになっていた。広場から戻ってきたマーチとヒオもまた酒場に来ていた。ココはふと思い出した。
「そういえば、昨日のあのこは?」
マーチは持っていたグラスを置いた。
「まだいるよ多分」
「なんだ帰らなかったのか」
ヒオは頬杖をついている。
「家出なんだって。大金持ってた」
マーチの目は疲れているのかぼんやりしている。
「なんだって? じゃああのこが市長の娘?」
「誘拐じゃなかったのね」
今日一日ラジオを聞かなかったマーチにはさっぱりわからなかった。ココは詳細を教えてやった。
「近々目の色変えてやって来るかもな。めんどくせー」
ヒオは溜め息をついた。