目の前にはもうオーシーの街並みが広がっていた。馬車の中では『勇者の
血』の話もした。でも、結局何も分からなかった。今、タクトはオーシーの街の前の大きな門の前に立っている。パールは門番と長い時間話し合っている。
パールが走ってきた。 「やっと開けてくれるって、ホースは置いていくわ」
「ホースって?」 「この馬の名前よ」 そんな話しをしていると、門が軋む音と共に開いた。
「これがオーシーか」
港町は活気に満ちていた。話し声や馬車の車輪の音、大声で魚を売っている人もいる。
「今からわたしの友達に会いに行くわね。とっても信用できる友達よ」
「何処にいるんだ?」
「あの七色の屋根よ」
「ネートー!ネートー」
パールが何度も強く扉をノックする。
「そんなにノックしなくてもいいんじゃないか」
「ネートーはいつも寝てるの」
すると、パールはいきなり勝手に扉を開けた。その扉にタクトは思い切り頭をぶつけた。
「痛いじゃないか!」
「ネートー!」
二人は同時に声を出した。
「だーれー?」
奥から大人の女性が出てきた。
「パールよ。それより『木彫りの不死鳥』って知ってる?」
パールが質問するとネートーは寝起きの顔からきりっとした顔になった。
「ええ。このあいだ話したR11の男が言ってた。訳が分からなかったけどまさか、あなたの口からその言葉を聞くとは・・・んっ、あの子は?」
「タクトっていうの、彼から聞いたのよ」
「こんにちは」
「こんにちは。ネートーよ。よろしくね」
「他に何か言ってなかった?」
パールがまた質問をした。
「そういえば、バラバラにしてやったとか」
「バラバラ?」
「ええ。確か『頭』『胴体』『翼』『脚』そして『王冠』だったと思う」
「バラバラだって!」
タクトが大声をあげる。
「それじゃあ、勇者の血は?」
「何それ?」
「気にしないで。あと少年がここに来なかった?」
「分かる訳ないでしょ」「そうよね。ありがとう」
「思い出した!サソ・・・」ネートーが何か言おうとしたが、タクトとパールは外に出た。
「お友だち、バラバラにされてたわね」
「ウェイトはバラバラにされてないけどね」
「なんだかあっちが騒がしい」
「本当ね。あそこは広場よ」
「一体何があったんだ?」