「吉本さん。ちょっといいかな?」
「え…あ、はい。」
俺は吉本カナに話しかける。
「図書委員を探してるんだ。吉本さん、いつも本を読んでるから…。引き受けてくれないかな?」
一瞬ためらったように見えたが直ぐに返事がきた。
「でも私、委員なんて…。」
俺が彼女にこの話を出したのには理由がある。
情報屋、三重からのたれ込みである。
“上田リサに注意しろ。”
上田リサ……同じ中学出身でいわゆるいじめっ子。
茶髪がかったショートヘアーで顔は良い。
制服をはだけさせており、先生から髪のこと・服装のことで注意されていた。
“7、8人のグループを作ったらしい。学校が始まって一週間、そろそろ始め頃だと思う。”
中学の頃、上田リサがいじめの対象にしていたのは、地味で気弱そうな女子だった。
俺は吉本を守りたかった。
「大丈夫。やってみようよ。友達もきっと増える。」
俺はニコッと微笑んだ。