ギイギイと風車が動く音がしてしばらく無言の時間が過ぎた。
「ここ、俺が十三年前まで住んでた家なんだ。」
「でも前に場所はわからないって…」
「ああ。俺も今の今まで知らなかったよ。けど村に入ってから予感がしてたんだ。なんとなく、雰囲気で気が付いてた。そんでこの家を見て確信した。ここは俺の家だ。」
「ねぇ」
シーラが言った。
「今晩はここに泊まらない?」
「シーラ…」
「いいんじゃないか?それに、その方が宿代が浮くってもんだ。」
「はい。私もいいと思います。」
「へへ…サンキュ。」
久しぶりに普通の食事をとり四人はただ語り合っていた。
「いいか、雪。そもそもこの国はだな…」
ラウフは雪に熱意のこもったこの国についてを語りだした(そして雪もまた熱心に聞いている)。
苦笑いでその様子を見ていたランスォールだがその場にシーラがいないことに気付いた。
「あれ…シーラ?」
外に出ると風に乗って唄が聞こえてきた。
(あ…この唄…)
小高い丘の上にある墓の前でまるで捧げるように歌うシーラを見つけた。
風に靡く銀髪が『あの日』と重なりすぐに戻る。
まさか違うと己に言い聞かせランスォールは歌い終わったシーラに声をかけた。