「俺らも一応苦労してんだぞ。でもなぁ『奇跡の子』に出会ってからお宝集めはだいぶ楽になった。まるで神に導かれているような、そう思えるほどに」
奇跡の子、それは誰のことを示しているのか。ソラはよく知っている。
いつの間にか自分がそう言われるようになったことにさほど違和感を感じていなかった。
「今まで何度も偽物の宝だとか大賢者と名乗る胡散臭いじいさんに会ってきたが…あの死体ばかり転がる戦場でお前を見つけたとき本当に『本物』を見つけたと確信した。」
ソラがキャプテンと初めて出会った日のことだ。だがそのときのソラは戦争のショックからか記憶を失いキャプテンと会う前のことは覚えていなかった。
「お前には『神の御加護』がある。だからなのか俺が手に入れたいものが意外と簡単に手に入るんだよな。」
なんともしっくりこない話だ。ただ単にキャプテンの運が良いというだけの話、少なくともこのときのソラはそう思っていた…。
ソラはキャプテンの話も踏まえ過去のことを思い返していた。だがやっぱりキャプテンと会う前のことを思い出せない。
そんな事を考えていたときだ。一通り話終えたキャプテンが突然立ち上がった。
「…やばいな。あの船」
ポツリとつぶやいたキャプテンの視線の先にはまだ米粒ほどにしか見えない中型の船が飛んでいた。
「何がやばいんだ?まだあんなに遠くを飛んでいるのに」
ロキの意見は的を射ていた。確かにそれほど遠くにいれば危険視するほどではない。
「いや、既に俺達は奴の射程範囲内に入っている。…まぁだが船の外に出なければ大丈夫だ。マミー、近くの島に連絡をとってくれ」
マミーは頷くと通信機に手を伸ばした。
「奴って誰?逃げんのキャプテン?」
「あぁそうだ。ちょっと厄介なやつでな」
キャプテンは操縦桿を握るとノアを旋回させた。
「ちょっと、キャプテン」
島からの連絡なのかマミーがキャプテンを呼んだ。キャプテンは通信機にむかって自分の名前を言うと機械に耳をかたむけた。
ザー、ザー
ノイズの後に男の声が聞こえてきた。
「ーーー逃げるのか…ダンテ」
その声は小さく囁くような声だった。