雫の涙

龍王  2006-06-07投稿
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とても
とても大好きな人
私より五歳上の従兄弟
でもその大好きな従兄弟は私を妹くらいにしか思ってくれていないと分かっていた。

好き
そう言えたらどんなに楽か…
でも絶対に言わない

私は
私の想いより彼自信の心の方が大切だから…

田舎。
家から外を見ると、田んぼ、畑、緑のしげった山、それに人の手が加わっていない土の道がある。
少し歩けば小川もあり、季節によっては魚がよくいる。
「──………いっちゃん」
「…」
私が片恋している従兄弟の一也は、最近彼女を亡くした。
一也は荒れに荒れ、物も食べず、いきなり暴れたり泣き出したりと手におえ無くなった。だから田舎の私達の家に預けられた。
空気の良い、緑溢れる静かな田舎に来た一也は、暴れる事は無くなったが一言もしゃべろうとしない。
「いっちゃん…ねぇ何か食べて…好きだよね?桃や蜜柑…いっちゃんの好きな物全部あるよ。何か食べて…」
五歳上の従兄弟は頼りがいのあるしっかりした性格で憧れてもいた。なのに今は…
「……そんなに…彼女を失ったのが…堪えられ無かった…?」
やつれ、見るにも耐えない憔悴ぶりに涙が溢れる。
「私がいるよ…私はずっと…いっちゃんの傍にいる…」
「──………雪華」
「へっ…」

〈雪華〉それはいっちゃんの彼女の名前…

「Σンッ///」
「雪華…」
一也は雪華と名を呼び口付けを交した。
「わ…私は…ち…違う!雪華…じゃない。私は〈雫〉よ。…いっちゃ…」
「雪…華…」
一也は雫の頬に触れながら、〈雪華〉と名を呼び続ける。悲痛に歪み今にも涙を溢しそうな一也の表情を直視した〈雫〉は思わず、言ってしまった。
「一…也」
「雪華…雪華!!」
一也は〈雫〉を雪華と思い込み、強く抱き締めた。雫を自分の彼女だと信じきっている。
「……いっ…ちゃ…──…一…也…」
亡くなった一也の彼女〈雪華〉と勘違いされ、抱き締められる〈雫〉は愛する一也の腕の中で、一粒の涙を流した。
そんなに…
彼女が…
雪華さんが大切だった…?
亡くなった現実を受け止められず…
妹のように可愛がってくれた私(雫)を
彼女の身代わりにするくらい…
私はいっちゃんが大好きだから
私は自分の想いよりいっちゃんの心を守るよ…
それが
亡くなった彼女の身代わりでも…

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