タクトがゆっくり後ろを向くと、背中に大きな剣を背負った17歳くらいの青年が立っていた。それを見て老人は急いで、怯えるようにしてフードで顔を隠してしまった。
「何してるんだ」
青年は低い声で威嚇するように聞いてきた。
まずい、このままじゃ・・・
その時、パールが平静を装って切り返した。
「老人を助けただけです。それよりこの村は何があったんですか?」
「知らねぇ。俺は今帰ってきたところだ」
相変わらず威嚇するような声だ。いや、これがいつもの声なのかも知れない。
「村の人たちは何処ですか?」
「だから、知らねぇつってんだろ!」
今のは本気で怒ったらしい。パールは「ごめんなさい」と縮こまってしまった。でも、この様子からするとどうやらR11ではなさそうだ。
「村にはこの老人しかいなかったんだ」
老人は青年が村に居なかったと知ると顔を出した。
「心配するな。俺の村はそんなやわじゃねぇ。この村の地下にもしもの時の為に小さな村を造ったんだ」
「でも、さっきは知らねぇって」
パールが恐る恐る聞いた。
「さっきは悪かったな。だって、怪しい奴等に簡単に教える訳ねぇだろ。でも、人を助けるような奴等は別だ」
青年は第一印象とは違った爽やかな笑顔を見せた。その笑顔を見るとタクトは不意にウェイトを思い出した。
ウェイトは今頃、何処で何をしているんだろう?
「おっと、忘れてた。俺の名前はウェド。お前らは?」
「ぼくはタクトでこっちが・・・」
「パールよ。行商人をしてるけど、今は休業中」
「わしは思い出せん。すまんのー」
「記憶を無くしたのか。
一体誰がこんなことをしたんだ?」
「R11よ」
「R11なんだそりゃ?」
本当に知らないといった感じだ。
パールは「はぁ〜またか」とうんざりしながらも、タクトに話した時と同じように丁寧にR11について説明した。
「で、R11の1人の17歳くらいの青年がこの村を襲った」
「なるほど〜よくわかった。折角こんなに仲良くなったんだ。地下の村に連れてってやる」
「どうしようかな」
タクトは迷った。ウェイトを探さないといけないし、時間も無い。さらに、パールの件もあるからだ。
「剣士の多く住む村と『勇者の血』、お友達ももしかしたらいるかも」
その言葉を聞いて決意した。
「よし、連れてってくれ」