『奈央ちゃん、これ口元に当てて!!』
ミズホさんは、とっさにチョコの入っていたビニール袋を、あたしの口元に当てた。
『はぁ―‥はぁ―‥はぁ―ー‐‥‥。』
数分間、そのビニール袋の中の空気を吸っていたあたしは、
徐々に、呼吸が楽になって来るのが分かった。
『奈央ちゃん。大丈夫だからね。直ぐに呼吸が楽になるから安心して。』
ビニール袋を口元に当てたあたしは呼吸が落ち着くと、
側で心配そうな顔で見つめるミズホさんの顔を見た瞬間――
思わず涙ぐんでしまった。
『奈央ちゃん‥‥。』
ミズホさんが、あたしの頭を優しく撫でてくれた――
聖人が何時も撫でてくれるみたいに――
『よしよし‥‥。落ち着いた?!』
あたしは、たった今自分に起こった体の異変から、
やっと落ち着きを取り戻し、
少しの間、何も考えられずにボーっとしていた。
そして――
『ミズホさん‥‥。ありがとうございます。あ‥あたし‥‥。』
あたし、やっぱり過呼吸ですか?!――
そう言葉が出て来る前に
ミズホさんが先に口を開いた――
『奈央ちゃん、大丈夫だよ。心配しなくていいんだよ。
きっと、色んなコト考え過ぎて頭の中がパニックになっちゃったんだね。
大丈夫。奈央ちゃんには、ちゃんと守ってくれるヒトがいるって信じてね。』
『ミズホさん。どうして、発作を起こしたトキの対処の仕方‥‥知っていたんですか?!』
『あはは。あのね、あたしも昔、過呼吸の発作をよく起こしていたから。』
そう言って、明るく笑って答えてくれたミズホさん――
そうだったんだ――
ミズホさんも、過呼吸の発作を起こしたコトが、あったんだ――