地球から数十億光年離れた所にある惑星、リィス。その星には沢山の動植物が生息し、豊富な資源がもたらされていた。そして“人”もそれらと共存し、生活していた。
しかしリィスに住んでいる“人”は、地球の“人”とは別の“人”だった。彼等は姿形、食事、運動能力、頭脳など大部分の要素で地球人とほとんど差はなかった。ただリィス人は貴重、かつ危険な一つの能力によって“人”とは言えなかった。
少し話しはずれるが、リィスに住む人々の少数は故郷を地球に持っている。すなわち彼等は元々は地球人で、ある力を持っている為に遠い惑星で生活をしているのだった。ここで補足として昔話をしよう。現在を仮に西暦二千年とすると、リィスに初めて人が降り立ったのは約千百年昔の事だ。日本は藤原氏が納める平安時代、古今和歌集が作られた頃だった。そんな遠い過去に宇宙を横切り、地球と似た環境をもつ星まで移動ができた事実がある。またその時から現在まで、この移動を可能としていた…。
この当時では有り得ない、むしろ今でも不可能なこれらの事象。それを可能としたリィス人の力。その力こそが彼等と“人”を分ける能力であった。力は地球の言葉でいう“魔法”。それは特殊で不思議な、科学では解明できない非常な存在だ。“人”は古い時代それを非難し、恐れ、あるいは崇めていた。近代ではそれは絵本、フィクションの中での存在になった。そして魔法を使う彼等のことを“人”は魔法使いと呼んだ。
リィスの物語は、その星に初めて魔法使いが降り立ってから千年後のとても平和な時代から始まる。時は地球の西暦1900年代、第一次大戦前の事だった。