「この村に住んでいる奴等はみんな、家の下に地下への隠し通路があるんだ」
荒れ果てた村を歩きながら、相変わらずの迫力のある声でウェドが説明する。やはり、これが普通の声らしい。
「そうか、それでみんな一斉に居なくなってしまったんじゃなー」
「この村に住んでるんじゃないんですか?」
「ああ、そうなんじゃよ。いきなり襲ってきて、びっくりしたぞ」
「ウェド、今は何処に向かってるんだ?」
「俺の家だ」
「何で他の家の隠し通路を使わないんだ?」
ウェドは一瞬躊躇ったが教えてくれた。
「隠し通路にはそれぞれの暗号があるからだ」
それからは四人は無言でウェドの家を目指した。
ウェドの家は他の家と同じように完全に倒壊していた。 「ここだ。うわ〜、やっぱりやられてたか」
ウェドは本当に悲しそうに肩を下ろした。
「で、隠し通路は何処じゃ」
老人はなぜか急かしている。
「急かすなよ。今開けるから」
「静かに!」
「どうしたの。タクト」
「足音、それもかなり沢山の」
タクトは既に剣を出していた。
「ああ、聞こえる。ムシだ」
ウェドも背中の大きな剣を構えた。
「いた!あそこよ」
パールはすぐに弓を構えると、その遠くのムシを射抜いた。
「あんなに遠くの敵を射たのか」
ウェドの驚いた声にパールは「話し掛けないで!」と静かに厳しく言うと、次々と遠くのムシを射ていった。
「凄いなー」
ウェドは小さく呟いた。
「そろそろ限界よ。数が多過ぎるわ。逃げた方がいいかも」
「わかった。俺が通路を開けてくる」 ウェドは急いで通路を開けに行った。 「お嬢さん、後ろじゃ」
ムシが今にもパールに飛び掛かろうとしている。
「大丈夫か。後ろは任せて」
タクトが素早く対処した。
「ありがとう」
「おいっ、早く開けんか」
「ちょっと待てよ」
「何しとるんじゃ!」
「いや〜こういうのってさーなんていうか。長く使わないものって・・・」
老人はしびれを切らしたようだ。
「なんじゃ、はっきり言わんか!」
「早く開けてよ!」
「早く開けてくれ!」
「ああー、わかったわかった。はっきり言うぞ」
ウェドは観念したように言った。
「忘れちまった」