「送ってもらって悪いわね。」翔人の母・裕美が美咲に言った。
「いえ、いいですよ。」美咲は丁寧に言った。
「あの子、昔はバスケ嫌いだったのよ。」裕美が悲しそうにうつむき、美咲は黙って聞いていた。
「私の夫、翔人の父は柊木剣。バスケ選手だった。」「柊木剣って、日本代表の・・」美咲は驚いた。
「剣はいつも翔人にバスケを教えていた。翔人もそんな剣が好きだった。あの日までは・・・」
「あの日?」美咲は聞く。「剣は死んだの。遠征中に交通事故にあってね。」
美咲は何も言葉が出なかった。裕美は続ける。
「しかも、相手はバスケ選手の不注意だったの。」
裕美は涙を流して続ける。「遠征に行かなければ剣は生きてた。そう思った翔人はバスケを嫌ったわ。」
美咲の目にも涙が浮かんでいた。
「翔人はしばらく引きこもって何もしなかった。でも、ある日剣からの宛名で手紙が届いたの。」
裕美は思い出しながら美咲に言った。