線香花火のように
はかなくて
一瞬の光に
夏の匂いに
目眩がした
貴方はまだ奏でていますか?
共鳴していますか?
あの夏の日,あたしは何ももっていなかった。虚構の宝石に包まれて鳥籠のなかでもがいていた。
あたしを証明できるものが欲しくて,暗闇の中を手探りをしていた。叫びたかった。
此処にいるって。
貴方は小さなライブハウスで音を奏でていた。
踊る獅子のように激しく強く,その音はあたしの身体中を熱くした。
あたしはただ貴方を見つめていた。強烈な憧れと嫉妬。
探していた感覚だった。
あたしは貴方にいった。
「エクスタシー」
貴方は悪戯っ子のように笑うと名前をきいた。
「ハナビ」
貴方は笑いながらいった。
「ハナビちゃんね,俺はタツヤでいいよ。」
たぶん,無条件に落ちていたんだと思う。その日からあたしとタツヤはライブハウスで逢うようになった。
その間,音で交じり合った。言葉も肉体も越えたエクスタシーにあたしは泣きそうだった。
タツヤは距離を確かめるようにあたしの目を見つめていたし,同じようにあたしもバランスをとっていた。
決して繋がることはなかった。
あの夏の日,いつものように