「お…おい!てめぇ…ぶち殺し…」僕は目の前に血だらけで膝を抱えている その女に少しだけビビッていた。
握っていた包丁もブルブルふるえていたんだ。
僕は覚悟を決めた。
「て…テメェ!」
「テメェ…?」
「テ……メ…」
『女』は うつ向いたまま無言だった。
僕は少し安心してしまった。 それまでの緊張感から ちょっとだけ開放された気がしたんだ。
「こ…こいつ気絶してんのかな?」
この女も見た所かなり傷だらけだったし、思っていたほど怖い不陰気では無かった為、僕はもう冷静に『女』を見る事が出来た。
(こいつ、気絶をしている振りをしているだけかも知れない。)
僕は、もう一度持っていた包丁を強く握り絞めて、冷静にドアの方まで下がった。
「うう…う…」
『女』が呻き声を上げた!
「う…うう…」
体を左右に揺らしながら顔を上げた!
僕は包丁を両手でしっかりと握り絞め直した。
『女』の髪の毛は真っ赤な血でベットリ濡れていてベタベタとした感じだ。
その髪は長く、顔がハッキリとは見えないけど、こちらの方を ゆっくりと目を細めながら睨んでいるのが分かった。
…ただ、その目は なんだか、物凄く懐かしい目…だったんだ。