「こ…この野郎!、よ…よくも母さんを…母さんをっ!」
僕は感情を抑える事が出来なくなって大声で叫んだ!
「こ…この…イカれ女め!お…お前だけは、絶対に俺が ぶっ殺してやるっ!」
僕は無我夢中で包丁を振りかざした。
「…めて!」
『女』が何かを言ったが興奮で聞き取れない。
「や…やめて…秀君」
(…はぁ?)
僕は自分の耳を疑った。
何の罪も無い母や黒田さんに、残虐極まりない事をした殺人鬼が 僕の名前を呼んだ?!
「お…お前は…黒木志津江なんだろっ?」
僕は震える声を振り絞って女に聞いた。
「そ…そうよ…。」
女は小さく酷く疲れた声で答えた。
「や…やっぱり そうかよ!テメェだけは絶対に許さねぇんだよ!イカれ女っ!」
また冷静さを失った僕は側にあったスポーツバッグを女に投げつけた。
「ひぃぃっ!」
女は両手で顔を庇い一瞬たじろいて体をすくめたが、すぐさま顔をこっちに向けて、目を見開いて絶叫した。
「い…イカれてるのは、あんたよっ!――――――――――!!」
女が そう叫びながら こっちを指差した瞬間、僕の肩に物凄い激痛が走り、部屋中に狂った笑い声が響いたんだ。
そう…本当の『暗闇の女』の笑い声が…。