「ガキは相手にしないんだ」
そう言って大きな手の平をあたしの頭に乗せて少しなでて、そして笑顔を見せてから部屋を出た。涙が出たのは家に帰って湯舟につかってからだった。
高1、152センチのBカップ。
童顔を隠すための化粧も、今時に見せるための巻髪も、全部全部どうでもよくなった。きっつい言葉でふられたからね。
たしかに社会人の27歳に16はガキかもね。なぐさめるのに、頭なでるくらいガキかもね。
分かってる。
ちゃんと分かってる。
わざと突き放した言い方したんだってくらい、頭悪いあたしにだって分かるよ。分かってるよ。でもさ、分かっちゃうような優しさを見せてふるなんて、あり?どう気持ち切り替えればいいんだよ。
あー最悪だ。死んじゃえ、自分。やっぱ好きなんじゃないかよ。あきらめられないんじゃないかよ。
3日後、またそいつと会う。なんつったって塾の講師だからね。担当の講師だからね。あの日の翌日、初めてすっぴんで学校行った。短くて弱いまつげ、なんの変哲もないストレートの髪。笑われた。ガキかよってさ。
なーんか悔しくて、一緒に笑いながら泣いちゃった。
あーくそ。思い出せば思い出すほど腹立つな!ちくしょーっ!あーもう、やっぱ好きだよ先生!先生だなんて、みんなが呼んでるのと同じ名前じゃやだよ。ヒロキでしょ、知ってるよ、名前くらい。好きな人の名前くらい知ってるよ。
似合わない大人な口紅ぬって、高校生が読まない雑誌買って、少ないおこづかいでブランドの服買って。
ねえ、あたし、他の生徒より少しは許容範囲入ってた?
赤い口紅のこの唇は、少しは目に入ってた?
どうしてかな。
こんなに好きなのに。