おおぉぉぉん―――――\r
音、というよりも強風の衝撃が、妖需達の体を、魂を―――\r
激しく、揺さぶった。
轟音に耐え兼ねたように、自らをきつく抱きしめて座りこんでいるフィレーネ以上に。
愕然とした、顔があった。
いつもどんな着色剤を使っているのか不思議がられる、限りなく白に近い、萌黄色の髪がたなびいている。
陶磁器のような白い肌は、これ以上ないくらいに蒼白で。
震えていた、かもしれない。
少々足を引きずるようにしながら現れたジンは、メシアの様子を一瞥し、息を短く吐いて目をそらした。
おおぉぉぉん―――――\r
おおぉぉぉん―――――\r
哀しき響きはいつまで続くのだろう。
否。
いつか、終わる日が来るのだろうか。
妖需は、いつの間にか"彼"に『弟』と呼ばれた存在に、自分を重ねていた。
集合体の中の、違う存在。
異端。忌むべき危険因子。
皆は、「全然違う」と言ってくれるだろう。
違う、言うのだ。
暗い発言をする"仲間"を諌めるのと同時に、励ます事で、自分を優位に立たせられる。
自分は、ずっとマシ。
自分にはこんな部分はない。
自分はこんな事ができる。
そうやって、自分に言い聞かせて。
いつから―――?
そして――――――
いつまで。
内部に詳しい案内役がいるとはいえ、すんなりし過ぎる位にあっさりと脱出を果たした一行は、それが何故可能だったか、今になって気付いた。
研究所の外は、見知らぬ森だった。
メシアの治療あって少しは見られるようになったが、皆拘束時に気絶させられた傷が癒えきっていない。
がさり。
突如、茂みが不自然に鳴った。
尾行の気配はしていたが、そろそろか――……
妖需は風矢に手をやり、腰をおとした。