さて。海潮から聞いた話によると、隣の県の山中にてどうやら奇妙な事件が起こっているらしい。なんでも、山に入った人が帰って来なくなったそうな。遭難だね、要は。けど、問題はそれだけじゃない。編成された捜索隊の人達もまた、誰ひとりとして帰ってこないのだ。さほど深くもない山、しかも冬でもないのに、有り得ない程の大規模遭難。で、これは何かが有るに違いない、と踏んだ我らが部長がその調査に踏み切った、というわけだ。しかもどうやったのか、公的機関から許可まで引っ提げて来て。
ここまで来たら参加しない訳にはいかない。先輩、支度金なんか貰ってきてたし。ま、楽しいから良いんだけどさ。
ミッション開始は週末、金曜日の午後に麓の宿泊施設にて一泊。明朝、午前五時からの出発となる。荷物は支度金三万の中から各自用意との事。
因みに先輩は外せない用事が出来たとかで入るのが遅れるらしい。人を巻き込んでよくもまぁ、とは海潮の台詞だ。
「何が悲しゅーて休日に野郎二人でハイキングなんてせにゃならんのかねぇ」
「それは言わないお約束」
ともかく、そういうわけで。僕の快気祝い不思議探検ツアーが始まることになりましたとさ。