清志は隣の妻の目を盗んでケータイを開いた。
“会いたい。でも…。もうどうしていいかわかんないの”
勢いよくケータイを閉じる。もやっとした気持ちとむずがゆい気持ち。
(ここはシカトだ。明日まで引っ張ろう)
ケータイは充電器にセットされて、赤い点滅を見せている。
「ねぇ…」
いつの間にかテレビを見ていた妻が後ろに来ていた。
「ん?!」
「ん?!じゃないわよ。そろそろ来そうなの。その前に…」
清志は最後まで言わせないように唇をかさねた。
「あっち行こ」
ベッドを指さし、灯りを消した。
残されたケータイが再び振動した。
“あさっての金曜日会えないかな。会えないとおかしくなりそう。 美幸”