* * * * * *
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
『はやっっ!!奈央ちゃん、聖人が来たみたいよ!!チョコ、此処に隠しておくわね!!』
ミズホさんが、ラッピングされたチョコを隠してくれた。
よかった。
ちょうど、チョコを作り終えて、後片付けが済んだ所だったから。
『はぁい。』
あたしが、玄関先に出ると、
そこには、あたしの大好きなヒトが立っていた。
『“はぁい”じゃねぇよ‥‥奈央が‥‥具合悪いって‥‥ミズホが言うからっっ‥‥‥。』
聖人?!息が切れてる?!
もしかして‥‥
走って来てくれた?!
『ごめんね。もう治まったんだけど‥‥。取り敢えず上がって。』
聖人があたしの家に来たのは、今日で2回目。
初めて来たのは、クリスマスパーティーのトキだから、
約2ヶ月ぶりだった。
『聖人ぉ。奈央ちゃんを、ちゃんと守ってあげなきゃダメだからね!!』
チョコ作りを終えてから、下ろしたミズホさんの髪は、
何時もの様に、ふわふわしている。
『何?!奈央が具合悪いって‥‥どうしたのよ?!』
あたしの方を見て、聖人は不思議そうな顔をして、そう言った。
い‥言わなくちゃ‥‥‥。
今日こそは、ちゃんとあたし‥言わなくちゃ‥‥。
言わなきゃ何も伝わらない。
今――
あたし自身が戦っている“心の病気”のコト。
それは――
ずっと、ずっと、言い出せないでいる、
あたしの“心の中の闇”。
『聖人。あたしね、ずっと聖人に言えなくて、黙ってたんだけど‥‥。
あたし、心の病気で、ずっと前から薬を飲んでるの。』
『‥‥‥‥。』
聖人は無言だった。
何も言わず、黙ってあたしの顔を見つめている。