だから、あたしはそのまま話し続けた。
『そ、それで‥‥最近になって1度、息苦しくなったコトがあって、そのトキは、それで治まったんだケド‥‥。
さっき、ミズホさんと一緒にチョコを作ってたトキ‥‥。
また、息苦しくなって‥‥。
それが、段々酷くなってきて‥‥。
あたし、もしかしたら死ぬんじゃないかって思う位の息苦しさで‥‥。
ミズホさんが、ビニール袋をあたしの口元に当ててくれて‥‥‥そ、それで‥‥何とか呼吸は落ち着いたんだケド‥‥‥。』
あたしが、とても回りくどい説明を始めたせいか、
側で聞いていたミズホさんが、
その後、聖人に分かり易く説明してくれたんだ。
『聖人。奈央ちゃんね、心の中にいっぱいいっぱいキズがあるの。
ずっと1人でそのキズを治そうと頑張っているの。
そのキズを治すには、病院の薬だけじゃダメなのっっ!!
だからあたし、聖人を呼んだのよ!!』
聖人にそう言ってくれたミズホさんは、
ちらりとあたしの方を見て、優しく微笑んだ。
次の瞬間――
目の前の聖人が、
無言であたしを抱き締めた――
背の高い聖人に抱き締められたチビのあたしは、
視界が聖人の胸の辺りで遮られている。
ギュッ――
抱き締められている間、
聖人は、ずっとずっと無言だった。
そして――
『俺‥‥早くお前を守ってやれる様になりてぇ‥‥‥。
汚ねぇオトナになるのは嫌だけどよ‥‥‥。』
そう言って、更に強く抱き締められた――
気のせいか――
聖人の手が――
微かに震えていた――