タクトは光の中へ飛び込んだ。それと同時に上から巨大な岩が落ちてきた。あと少し遅かったらと思うとぞっとする。
「嘘だろ!間に合ったのか!」
「あ、足だけは、自信があってね」
タクトは息を切らしながら答えた。
「もしかして、あの岩でわたしたち二人をムシと一緒に閉じ込めるつもりだったの」
パールは少し不機嫌に問い質した。
「すまんかったな。わしもこの街の住人を守る為だったんでな」
目の前に鍛え上げられた
腕が特徴的な男の人が立っていた。良く見ると彼の後ろには大勢の人々が街を歩いていた。どうやらやっとクォールマークに到着したようだ。
「よう。村長。久しぶりだな」
「おお、ウェド。いやー無事で何よりだ」
「こいつらのお陰で助かったんだ。えーっと」
「タクトです」
「パールです」
老人はフードを深く被ってしまった。
「息子が世話になったな。よし、感謝の印に家の招待してやる」
「あのーお構い無く」
パールが困った様な声をあげていた。なぜなら、村長が無闇矢鱈とケーキやクッキーなどを勧めてくるからだ。
「遠慮は要らん。さぁ、どんどん食べろ」
「少し聞いても良いですか?」
タクトが切り出した。
「なんだ?わしは頭が悪くてな」
「この街にぼくくらいの歳の男の子は来ていませんか?」
「おらんな」
「それじゃ『勇者の血』というのをご存知ですか?」
「知らんな。すまんな」
「いいえ、ありがとうございます」と口では言ったものの落胆の色は隠せない。
「そんなことだったら『魔導師の村』へ行ってみたらどうだ?」
『魔導師の村』・・・か
「あそこには『学校』があるからな」
「がっこう?」
「要するに勉強するとこだ。魔導師は賢さが無ければ話にならんからな」
「『学校』か。そんな所があるんですね」
「親父。俺の大切なハンマーどこやったんだ!」
奥の部屋からウェドの怒鳴り声が聞こえてきた。「知るか!また無くしたのか!」
「どうせ親父がまた何処かに無くしたんだろ!」
最悪だ。他人の親子喧嘩ほど気まずいものはない。
「てめえ、この野郎、友達の前だからって容赦しねぇぞ!」
「早くかかってこいよ!」
パールは勧められたケーキが気に入って黙って食べている。
タクトは笑うしかなかった。