奈央と出会えたから。<233>

麻呂  2008-09-26投稿
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カチャッ―ー‐



バタンッ―ー‐



ドアを開閉する音がした。



ミズホさんが部屋から出て行ったんだ。


聖人の胸に顔を埋めているあたしは、



ミズホさんに感謝の言葉も伝えられなかった。



明日、学校へ行ったら、ミズホさんにお礼を言わなくちゃ。


一緒に、バレンタインチョコ作りをしてくれたコトと、



聖人に旨く言いたいコトを伝えられる様に協力してくれたコト――



あたし、本当に本当に、今日はミズホさんに感謝してるんだ。



『ミズホ‥‥出て行ったな。』



『うん‥‥。』



あたしの背中に回された手が、今度は頭の上に乗せられ、



そして――



ゆっくりと優しく撫でられた。



キュンッ――



胸がキュンッと鳴るのを感じた。



『何で黙ってたの?!ビョーキのコト。』



ふと投げ掛けられる素朴なギモン。



『‥‥うん。ごめんね。心配掛けたくなかったから‥‥なかなか言い出せなくて‥‥‥。』



聖人の胸の中に顔を埋めていたあたしは、



自分の心の中の思いを今、全て吐き出すコトができ、安心したのか、



何だか、ふうっと涙腺が緩み、



思わず泣けてきた。


聖人に泣いているのがバレたら、



また心配掛けちゃう‥‥。



涙‥‥止まれっっ!!





『今度、息苦しくなったら‥‥直ぐに俺を呼べよ‥‥。何時でも、お前のトコ‥‥助けに行ってやる‥‥‥。』



そんなに優しい言葉掛けないで‥‥‥。


そんなに優しい言葉を掛けられると――


掛けられると――



涙――



止まらなくなるよ――



『‥‥‥ヒック‥‥‥‥。』



涙を堪えようとしていたら、



しゃくり上げてしまった。



聖人は何も言わず、あたしの頭を撫で続けた。



まるで、小さい子の様に――



あたしは聖人に甘えていた――



そして――



聖人の胸の中で泣いていた――





『‥奈央‥‥。お前の痛みは、俺の痛み。
‥‥愛してるぜ。』


2人だけの広い空間で――



2人だけのトキの流れが静かに通り過ぎて行った――



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