カチャッ―ー‐
バタンッ―ー‐
ドアを開閉する音がした。
ミズホさんが部屋から出て行ったんだ。
聖人の胸に顔を埋めているあたしは、
ミズホさんに感謝の言葉も伝えられなかった。
明日、学校へ行ったら、ミズホさんにお礼を言わなくちゃ。
一緒に、バレンタインチョコ作りをしてくれたコトと、
聖人に旨く言いたいコトを伝えられる様に協力してくれたコト――
あたし、本当に本当に、今日はミズホさんに感謝してるんだ。
『ミズホ‥‥出て行ったな。』
『うん‥‥。』
あたしの背中に回された手が、今度は頭の上に乗せられ、
そして――
ゆっくりと優しく撫でられた。
キュンッ――
胸がキュンッと鳴るのを感じた。
『何で黙ってたの?!ビョーキのコト。』
ふと投げ掛けられる素朴なギモン。
『‥‥うん。ごめんね。心配掛けたくなかったから‥‥なかなか言い出せなくて‥‥‥。』
聖人の胸の中に顔を埋めていたあたしは、
自分の心の中の思いを今、全て吐き出すコトができ、安心したのか、
何だか、ふうっと涙腺が緩み、
思わず泣けてきた。
聖人に泣いているのがバレたら、
また心配掛けちゃう‥‥。
涙‥‥止まれっっ!!
『今度、息苦しくなったら‥‥直ぐに俺を呼べよ‥‥。何時でも、お前のトコ‥‥助けに行ってやる‥‥‥。』
そんなに優しい言葉掛けないで‥‥‥。
そんなに優しい言葉を掛けられると――
掛けられると――
涙――
止まらなくなるよ――
『‥‥‥ヒック‥‥‥‥。』
涙を堪えようとしていたら、
しゃくり上げてしまった。
聖人は何も言わず、あたしの頭を撫で続けた。
まるで、小さい子の様に――
あたしは聖人に甘えていた――
そして――
聖人の胸の中で泣いていた――
『‥奈央‥‥。お前の痛みは、俺の痛み。
‥‥愛してるぜ。』
2人だけの広い空間で――
2人だけのトキの流れが静かに通り過ぎて行った――