酒場が賑わう頃にリリィは演奏を披露するようになった。彼女の容姿も相まって人々に可愛がられるようになり、ファンなんかも現れるようになった。
一方街では市長が相変わらず青白い顔で大騒ぎしていた。からかうように偽の犯人が次々と名乗りを挙げ、ますます混乱した。
人々はとっくにそんなことは忘れていた。リリィが市長の娘であることも。
一番近くにいるマーチでさえ忘れている。
時々リリィがマーチに笑いかけたりなんかするとすぐにヒオやジンザ達が冷やかす。マーチは冷やかしを華麗に無視する。
演奏を終えたリリィの肩をつついてココは言った。ちょっとは脈があるんじゃない?
リリィはココの家に出入りすることが多くなったが、廃車で生活し続けた。マーチが食事を運ぶことはなくなったが、変わらず会いにやって来た。
ココの家で風呂を借りてから帰るときも彼女を迎えに行った。その時の彼女は決まってたまらなくいい匂いがした。