老人は、わしは村のことは何でも知っておるつもりじゃが新しいものを受け入れることはなかなかできない、良い考えも浮かんでこない
だが君なら、きっと良い名前が付けられる気がするんじゃが…
それに、ずっと先まで残るんじゃぞ!
少年は、悪い気はしなかったが、じゃあ付けますと素直に言うことはできなかった
名もなき花にしておいてはどうですか?と少年の父親が突然言った
少年は、僕もそれがいいと思うと言った
老人は、なぜそれにしたいのかな?と少年の父親に聞いた
名もなき花という名前にしたら皆が興味を示してくれて忘れないかなと、それにいつか息子が良い名前を思い付いたらその時付けたらいいと思うのですと言った
老人は、うむ…そうじゃなと
ゆっくりうなづき、満足そうな顔をした
それから数年がたち、老人は亡くなった
あの青い花は、図鑑に名もなき花として載るようになったが、相変わらず咲いているのを見た人は少年以外いなかった
いつしか忘れ去られたが、青い花はあの砂丘で静かに咲いていた
少年は青年になり、なぜあの砂丘が立ち入り禁止なのかを知りたくなっていた