校門を出て、独り。
「はぁ」
ため息しかない。そのため息すらも空には反映されず、排ガスを散らしながら走る運送トラックに奪われてしまう。
僕は今、高一だ。
時制のけじめが欲しくて必死にこう考えるもののまだ3年前を振り返る僕がいた。
ああ、なんて情けないのだろう。今の生活は決して苦になるようなことはないが、中学時代と現在、どちらがより充実していたかと聞かれたら僕は断然中学時代と答える。特に3年前だ、と。
「はぁ」
出るのはやはりため息。過去に縋り付く(すがりつく)自分が何だか惨めな気がしてならなかった。懐かしくて、今は学校が違う竜貴を、また思い出さずにはいられなかった。
屋上に誘われ、共に過ごす日々が増えた僕と竜貴は、委員会が同じというきっかけだけで親しい関係になり、楽しい生活を送っていた。
「勇馬、お前竜貴と一緒にいるのはやめろよ」
僕のクラスには笹部良介という男子がいた。彼は竜貴と幼なじみだと僕に言ってきたが、竜貴のことを嫌っているらしかった。
休み時間の度に良介は僕に竜貴から離れるように求めた。友達の少ない彼からすれば、僕と竜貴が一緒にいることを羨ましく思うと同時に、嫉妬心を持っていたのかもしれない。
この一人の介入で、僕と竜貴が災いの渦中に入るとは、気まぐれに遊び楽しい日常を過ごす僕らには予想できないことだった。