公園には僕と、ニット帽をかぶった男しかいなかった。その原因は、町外れというのと、なにより、午前5時という時刻だった。僕とその男はバーやクラブでジャズを演奏して、その日をしのいでいた。僕がピアノを弾き、彼がトランペットを吹いた。
「なあ」彼が言った。「日本からでてみないか」
「つうようするかな」僕は言った。
「行ってみれば」穏やかな風が吹いた。「すべてわかる」
その通りだった。行動しないことには、その結果というものは現れないのだ。
「どこに行こうか」僕は聞いてみた。
「む」彼はちょうど煙草をくわえて、火をつけるところだった。「どこだって同じさ。大事なのは、どこに行くか、じゃなくて、日本から出るか出ないか、さ」
彼の言うことは僕にはいつも正しく聞こえる。
東の空が少し明るんできた。僕は口笛で『枯れ葉』を吹いた。