ドキドキドキドキ――
いやだ。
心臓の音。
聖人に聞こえちゃうよ。
『なぁ、この家って奈央と奈央の母さん2人だけで住んでんだろ?!広くね?!』
あたしの心配をよそに、
聖人が急に話し掛けて来たから、
自然なキッカケで、
抱き合っていたあたし達は離れた。
『うん。広過ぎだよね。お母さんの勤めているスナックのママの知り合いの伝で借りてるから、この家の家賃は、たったの2万円なの。』
『マジで?!』
『あはは。信じられないよね?!
でも家自体が結構古いから、雨漏りするし、お風呂も何回も壊れたし。』
『ハハハ。マジウケるなっっ?!
でもぜってー2万は安いぜ、すげぇじゃん。』
『うん。そうだよね。聖人何か飲む?!寒いから、暖かいコーヒーの方がいいよね?!』
あたしは、コーヒーをいれる為、
キッチンへ立った。
そう言えばミズホさん。
せっかく作ったチョコ、
忘れずに持って帰ったのかな。
明日はバレンタイン。
忘れちゃタイヘンだもん。
何気なくキッチンの側のテーブルに目をやると、
ミズホさんが書き置きしたと思われるメモに気付いた。
“サトルの分のチョコ、持って帰るね。奈央ちゃんは今日、聖人にチョコ渡しちゃいなよ。
1日早いケドさっっ!!
じゃあ頑張ってね♪
ミズホ ”
あはっっ。ミズホさんたらっっ。
『はい、聖人。コーヒーいれたよ。』
『お。サンキュ。』
そうだっっ!!
コーヒーと一緒に、
チョコも食べてもらおっっ。
ん?!
コーヒーとチョコ?!
合わない???
ま‥‥いっか‥‥‥。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ‥‥‥‥‥。
『聖人。あ‥‥あのね‥‥‥。』
『ん?!』
『聖人って甘い物、苦手だっけ?!』
今更そんなコト、聞いてどぉすんのよ、あたしはっっ‥‥。
『ん―‥‥どちらかと言えば、あまり好んでは食わねーかな。』
ガガガガ―――ンッッ。
そ‥‥そんなぁぁぁ―――