大丈夫。誰もあたしのことなんて知らないから。わたしが明るく元気に振る舞えばそれがわたしになる。だから大丈夫。
「あたしはわたしになるんだ。
いつもみんなに囲まれて、幸せそうに笑っているわたしに、なるんだ。」
あたしはそう自分に言い聞かせた。
…不思議。自分に言い聞かせると、まるで本当のように聞こえてきた。
もう大丈夫だと思う。
わたしはわたしの部屋にある大きな鏡に、全身が映るようにして立った。
そして笑う。にっこりと。うん、上手に笑えた。
わたしは自分の笑顔に満足して、ベッドの上に寝転がった。
近くにあったぬいぐるみを抱き締めようとして、ぬいぐるみが無いのに気付いた。ぬいぐるみを取ろうとした手が宙でさまよい、すぐに引っ込めた。
思い出した。もうここにはないんだった。
少し寂しく感じたけれど、明るく振る舞う練習!あたしはてへっ☆忘れちゃってた〜。といいながら頭をこづいた。
…少しやりすぎただろうか。
今までの自分とは正反対の振る舞いに戸惑い、もう少し自然になるようにしよう、と思った。
すると。
「春希ー、もう準備できたのー?行くわよー。」
階下からお母さんの急かす声が聞こえた。