この山の雪は、深すぎた。
元々、このような雪山に住んでいない私には、到底越えられないものであった。
一歩一歩、ただひたすら歩く。
足の指先にはもう感覚がなかった。つい数分前にはとても痛かったはずなのだが。…凍傷になっているのかもしれない。
このような状態の中で、探し続けるのはもうできるはずがない。
でも、もう戻ることはできなかった。
この深すぎる山々の中で「国」と連絡をとることができなくなったのだ。
その上、吹雪のためここがどこか検討がつかない。
もう、何も考えず進むしか道は残っていなかったのだ。
僅かな可能性のひとつ。
あの村さえあれば、助かることができる。