「なぁ、カマキリって知ってる?」
「虫?」
「ちげーよ。都市伝説。両手に鎌持って、緑のレインコート着た女が出るらしいんだよ。」
「へー。緑色で鎌か。そりゃカマキリだな。」
「まぁ、口裂け女みたいなもんだよ。カマキリを見たら、見えなくなるまで絶対止まっちゃダメなんだ。ゆっくりでも、動いたら死ぬらしいぜ。気をつけろよ、正人。」
「ハハ…気をつけるわ。」
酒井正人。16歳
八月八日、午後5時。
塾で他校の友人に聞いたカマキリの話が耳から離れない…
あの時は軽く流したが、実は怪談とか都市伝説の類いが大の苦手だった。
公園。真夏で、日が長いからまだ外は明るかった。でも、逆に、夏の夕方のこの独特の薄暗い感じがまた薄気味悪い。
人通りの少ない静かな住宅街。同じような家が並んでいて迷路みたいだ…なんだか閉鎖的というか…
正人はとにかくこの“通学路”が嫌いだった。今日は特にだ。あんな話を聞いたから。
住宅街の路地を突っ切って、大通りに出れば賑やかになる。そう思って最初の角を曲がったときだった。
「…!!」
道の真ん中に深い緑色のレインコートを着た女が立っていた。
両手に、鎌が握られていた…