やばい…
直感で、正人はそう判断した。
(カマキリだ!)
振り返って来た道を戻るか、全力で真っ直ぐ走り去るか…
正人は、女の横を走り抜けた。 真っ直ぐ走れば人通りの多い大通り、引き返したら人気の無い公園。
正人は迷わず大通りを目指した。
走って、走って、走った。ただ、全力で。
たかが300m程の距離が無限に感じた…
(追ってはこない…)
大通りのネオンの光が見えた…助かった。
正人はようやく立ち止まり、振り返った。
300m先に、緑色の人影が外灯に照らされていた。
(カマキリを見たら絶対立ち止まったらいけない。立ち止まったら死ぬ…)
一瞬、緑の人影が外灯の中で肩を揺らして笑ったように感じた…
次に感じたのは、冷たい金属の刃が、首筋を撫でる感触だった…