あるところに、寝てばかりいる男がいました
何もしたくないなあ、と男は言いながら寝るのが常でした
ご飯は働き者の両親が作ってくれました
何不自由なく暮らしていましたが、男には一つ悩みがありました
おいらには嫁さんがいないな、困った
男は働きもせずとも結婚はしたいと考えていました
両親はさっそく、嫁探しをしました
お見合い相手を見つけては男とお見合いをさせました
男は働きもせずともかなりの面食いでしたので、なかなか決まりませんでした
そんなある日、両親は19人目となるお見合い相手を連れてきました
そのお見合い相手は、美しい娘でした
男は気に入りました
しかし、娘に結婚を申込むと断られてしまいました
男は落ち込み、娘に理由を聞きました
娘は、寝てばかりいる人より働き者で優しい人が好きですからと言った
男はその日から両親を手伝うようになりました
最初は娘に好かれたい一心だったが、毎日働きに出ていると段々楽しくなっていった
ほとばしる汗、仕上がる仕事、情熱、美味しいご飯…
数年経ったある日、家に帰ると手紙が届いていることに男は気付いた
あの美しい娘の母からだった
《いつかお見合いをさせて頂いた娘の母です
突然のお手紙をお許し下さい
娘は、一目見た時からあなたを気に入ったと言っておりました、なのであなたから結婚を申し込まれた時は嬉しかったそうです
しかし、娘は病気がちで結婚は無理だと日頃から私が言いきかせていました
娘を好きになって下さったあなたには感謝しています
娘は去年亡くなりました、あなたが働き者になったのを確認してから…私は喜びに満ちた表情で働かれているあなたを時々拝見すると涙が出ます
大袈裟かもしれませんが娘が、人の役にたったのではないかと実感します
ありがとうございました》
と書かれてありました
男は泣いた
ありがとうと心の中で何度も言いながら