気まぐれサ―ティーン 3

碧空と滄溟  2008-09-28投稿
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休み時間、毎回しつこく僕に訴えかけてくる良介。
「勇馬…」
「もうやめろよ」
今日もいつも通り話しかけてくる。
休み時間、周囲のざわめきの中でも良介の言葉を遠ざけて発した僕の叫びは彼に伝わった。
「嫌か?」
良介は突然声色を変えた。その声は僕の胸の中で低い音を響かせながら波紋を広げ、心の芯を震撼させた。
嘲笑が含まれた声が、僕の心に変化をもたらしていく。
「嫌か?」
2度目にその言葉が来たとき理性を失い、怒りが生まれた…。
「今日は寄っていくか」
放課後。掃除も終わり、帰る支度をしていると竜貴は教室の入り口から少し大きめの声で僕を誘う。いつもではなく、僕か彼、どちらかの気が向いた時に行く、そういう場所があった。
「ほら、どうだ!」
「あ、やったな!」
その場所が学校沿いの川だ。僕は竜貴に連れられきらきらと金色に輝く川面を眺めていた。そんなときいつも竜貴に水をかけられる。
竜貴はにやにやしている。ここに来るといつも僕が川に目がいってしまうことを知っているのだ。
「好きか?」
「うん」
僕は頷く。竜貴と一緒にこの景色が眺められることが本当に嬉しかった。
「ありがとう」
「うん? 何が?」
カラカラと自転車を押しながらこう尋ね、竜貴は僕に顔を向ける。水をかけあった僕らの制服はぐっしょりしている。
「こうして僕を家に送ってくれるよね?」
「俺の気まぐれに付き合ってくれるお礼だ」
竜貴は満面の笑みを浮かべる。僕も微笑み返す。
「また明日」
「おぅ」
歩き出す竜貴を見ようと振り返る。だが夕日の眩しさに彼の姿が掻き消される。どんなに目を凝らしても見えない。明日も会えるだろうか。そう思いながら家に入る。僕らの日常がまた一つ過ぎたのだ…。

「嫌に決まってんだろ!」
不意に立ち上がり、机を叩く。竜貴との情景がフリップブックのように瞬時に、しかし鮮明に浮かび良介を睨みつけた。『嫌か?』という彼の言葉は僕がこういう日々を過ごしてきたことを知っての発言だったのだ。
僕はわなわなと手を震わせ、いや自ずと震えてしまって――自分にもどうしても止められなかった…。



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