カツミの世界
依然として返事のない相手に、カツミはまったく次の行動がとれなくなっていた。
あの札束の写メ入りメールを送るも、なにも反応がない。
(アレなら何らかのリアクションは起こすでしょう)
と自信があっただけに、無理ヤリ取った休暇が…時間だけが流れていくのだ。
仕方なく部屋から外へ出る決断をしたカツミだった、小食ながらも減るものは減るのだ。
むなしいが、神様からのプレゼントともとれる休暇なのだ。コレ以上、部屋にこもっていることが苦痛に思えた。
ホストらしく見えない、大人しい地味めな服に着替える。
サラリーマン風スーツだ、昼間、街をうろつくには一番目立たない!とカツミは思っているが、なにぶん存在感ある男なので何を着ても目を引くのは仕方いない。
ややロン毛の茶髪、儚げな好青年では返って、その服では、浮いてしまってしょうがないだろう。
支えてあげなければと周りからいつも、気にかけてやりたくなる雰囲気の男だ、見かけだけは…なにぶんホスト商売をして成り立っているだけに、母性本能をくすぐるだけではダメなのだ。彼の場合、芯の強さが時折現れ、さらにいつも優しい。ありえないほど丁寧な振る舞いに、客は離れられない。らしい。
(いかん、話がそれていってるような一旦もとに戻して…。)
カツミはいつ返事があっても出掛けられるように、一泊分の衣類小物を鞄に詰めた。テーブルの上の札束も、取りあえずレジ袋に入れて鞄に収める。
これはコインロッカーに預けて、鳴らない、携帯を片手に食事に行こう。
財布はスーツの内ポケットに入れて…。東京メトロ丸の内線にのる。四谷三丁目で下車、行きつけの老舗料亭へと足を運んだ。ゆっくり出来るのでお座敷を選んで、
「小食なので、いつものように軽めで…すみません。お酒はいりませんから…お茶をよろしくお願いします。」
とカツミは伝えた、「連絡がとれたら同席する方が増えるかもしれません…すみません。その時は迷惑をかけますが席を一つ、よろしくお願いします。」
と付け加えて頭を下げた。その丁寧さが老舗女料亭将にも、可愛がられるポイント?なのだろうか。いつもカツミは、ひいきにしてもらってるのだ。
ここでのんびりしながら、気長にまちますか。
《ー続くー》