10年前―\r
高校二年生の夏・・・。淳と付き合って、丁度、一年が経った。
一緒に帰ったり、デートをしたり、毎日が楽しかった。プラトニックな付き合いが続いていたが、淳の事を心から好きだった・・・。初めての恋だった。
そんなある日、淳が学校帰りに、突然、こう言った。
「夏休みに日帰り旅行しねぇか?」
私の両親は、とても厳格な両親で、門限にもうるさかった。それを気にして、淳は、日帰り旅行を提案してくれたのだった。
「良いね。でも、お金もそんなに掛けられないしね・・・。どこに行く?」
淳は、笑って言った。
「金なら、心配すんなよ。俺、バイトしようと思ってさ。バイト雑誌で良い所見付けたの。今から面接してくれるって。帰りに行くから、今日は、一緒に帰れないわ。香里も、行きたい所、どこか考えといてくれよな。」
学校の門の前で、淳と別れた。いつもは、淳が一緒なのに、その日は、小雨の中、一人で帰る事になった。
最寄り駅に着くと、さっきは小雨だった雨が、本降りになっていた。
暫く、改札口の下で雨宿りしていたが、止みそうに無かったので、濡れるのを覚悟で、走って帰る事にした。