「なんて事だ…」
可愛い孫が暴漢されたと知った清松はその場に座り込む。
「心配するな。私がそいつに責任を取らせる」
そういい泥酔状態の健吾を引きずりどこかに消えていった。
「妙、泣いてないで湯を沸かしな。紅を風呂に入れないと」
客を取り終えたあやめが泣いている妙に激を与える。
「は…はい」
妙はノロノロと立ち上がり風呂場に向かった。
「紅ちゃん。立てるかい? 行くよ」
あやめに支えられる様に紅は歩く。
「ねぇ、あやめ姉さん?」
紅の口が開く。
「ここにいる女は皆こんな怖い思いして男に抱かれてるの?毎日、毎日…こんな惨めな気持ちで…」
「私達はお金を受け取って身体を売ってるから覚悟するけど、紅ちゃんは違う。あの甘ったれの馬鹿に無理矢理…。あいつの一物、鋏でちょん切ってやりたいよ」
あやめの台詞に紅はふふっと笑った。
「何があっても泣くより笑ってたほうがいいよ。女はね。強くなきゃ生きてはいけない。特に吉原ではね」
あやめの言葉に紅は黙って頷いた。
だが、紅の知らぬ間に運命の歯車が悪戯に動き出す。
「結婚?健吾さんと?」
あの離れでの一件から数日経った昼下がり、突然祖父清松の口から伝えられた。
「そうだ。大事なお前を傷物にされて黙ってられるか。向こうも今回の件で次男に家を正式に継がせることに決めたので健吾君を養子に出してもよいと言われてね。健吾君には責任をとってお前と一緒になってもらう」
「そんな!嫌よ。あんな男と一緒になんて。だったらずっと独りの方がマシよ」
しかし清松は厳しい顔で紅に言った。
「これは決定だ。健吾君は承諾している。祝言は三ヶ月後だから仕度するように」
帳場を飛び出し紅は部屋にこもった。
冗談じゃない。あんな、あんな男にまた抱かれなきゃならないなんて。
だけどじじは頑固だし、本気だ。何を言っても結婚させられるだろう。
結局、私も自由の身ではなく捕われの…。
三ヶ月後、吉原で紅と健吾の婚礼が盛大に行われた。
「坊ちゃん…。どうして…、こんなことなら…」
盛大な二人の婚礼を喜ばない者が三人。
紅と鶴。そして…