そして…俺は名前が欲しいという意味が分かった。
中絶か何かでこの世に産まれてこれなかったのか。名前は何にしようか…しかし声は、俺ではなく親につけて欲しいと言った。 しかたなく声の案内する場所に行った。1軒の家で立ち止まる。俺の恋人の家だ。 まさか…あいつが俺と付き合う前に子供を堕ろしていたなんて。
ちょうど恋人から電話。今日デートなのにいきなり遅れるって言うんだもん。今どこにいるの?
衝撃の過去だ。あんな明るい表情の裏側にそんな過去が…
俺は明るく振る舞った。いいんだ、どんな過去があっても。
その日、思い切って聞いた。お前の惰ろした子供が名前つけて欲しいってと。デリカシーがないって?俺もそう思う。気付いた時には彼女のストレートが俺の顔面を捕えてた。
結局その声は恋人の両親がかつて流産してしまった子だった。恋人は霊的な話が好きですぐに信じてくれ、うまく両親に伝えてくれた。
流産のショックで遺体を抱いてやることもできなかったそうだ。
恋人の兄か姉になるはずだったユウキと名付けられた声の主と、長い付き合いになるなんてこの時は想像もしなかった。