昔、ある山間の村に、桃太郎という青年がいた。
桃太郎は、三人の屈強な家来と共に鬼の巣窟「鬼ケ島」に乗り込み、約三千の鬼をほぼ全滅させ、鬼ケ島を壊滅させた。以後、桃太郎は鬼ケ島を「桃ケ島」と改め、自らの拠点とした。
それから40年
人里離れたとある山奥の洞窟…
「時は来たり。今こそ我等が鬼ケ島を奪還せん!」
40年前に辛うじて生き残った鬼と、その子孫達が、桃太郎一味の抹殺と、鬼ケ島の奪還の為立ち上がった。約200の鬼の軍団を束ねるのは、40年前、唯一桃太郎の顔に傷を負わせた当時のリーダー、ラセツの息子“シュラ”。
「まずは、先見隊、島の様子を見てこい。」
「はっ!」
桃ケ島、北側入江
「ここが、我等が故郷…鬼ケ島か。」
島の中央には、巨大な城が聳えている。桃太郎は、あそこにいるに違いない。
先見隊は、島の周囲をゆっくりと廻った。どうやら、人が住んでいる気配は無い。しばらく歩くと、突然目の前に森が現れた。
「気味の悪い森だな。おい、ムシ、入って見てこい。」
「へい。」
先見隊に所属するムシは、人一倍鼻が利き、目も耳も優れていた。微かな異変も見逃さない。
そんな彼でさえ、気付かなかった。六つの目が、自分達を完全に捉えていた事を。