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[秀人!秀人ぉ、今日も お姉ちゃん来てくれたわよ]
(本当?やったぁ!早く遊ぼうよ!こっちこっち)
『ハハハ秀君、慌てないで、今日はね お姉ちゃん秀君のお家に泊まるんだから』
(本当?本当に?やったぁ!やったぁ!僕、今日は お母さんと寝ないで お姉ちゃんと寝るぅ!)
『本当に?嬉しいな、でもまた お母さんに 怒られちゃうなぁ うちの秀を盗るなーって』
(いいの!いいの!お姉ちゃんと寝るだもんっ)
『だよねー?お姉ちゃんと秀君は恋人同士だもんねぇー、恋人同士だから秀君は お姉ちゃんの事 名前で呼んでねぇー』
(うん!分かった!じゃあ お姉ちゃんは『志津江』でしょ?だから…… シズ姉ちゃんって呼んでいい?)
『うん!いい、それいいっ!今度からは そう呼んでねヒ・デ・君』
[こらぁー!全く!馬鹿な事ばっかり言ってないで秀人も志津ちゃんも 早くこっちに来て ご飯食べなさーい!]
はーい!ハハハハハハ――――――――――――――――
僕は馬鹿だ…。
あんなに大好きだった お姉ちゃんの名前…忘れていたなんて…
大馬鹿だ…。
「シズ姉ちゃん…ごめんね…ごめんね…今…はっきり思い出した…大好きだった…お姉ちゃん…黒木志津江さん…ううっ」
僕は涙が止まら無かった。
それは…お姉ちゃんの愛情を忘れていた自分の愚かさと、『アイツ』に騙されていた悔し涙だった。