『……愛してる…鞠花』
『私を…苦しめないで…愛してるなんて…言わないで…蓮華』
「鞠花…?」
「…フゥ…ッ…ウ…」
鞠花は顔を手で覆い、目から涙をポロポロ溢し、悲しんでいる。
「鞠花…俺は…」
「……菫…さんから…聞いたの……身篭ってるって…」
「Σ!」
蓮華は驚き、顔を曇らせる。
「──……蓮華は私を…愛して無い。私を…一度の過ちで抱いてしまったから…責任を感じてるだけよ…」
「違う!」
「……私を…愛してなんか…無い。…私も…愛して無いわ…蓮華」
「鞠花…!」
「私は…椿と一緒にいる。…私は…蓮華じゃなく…椿を…」
蓮華が、涙を流す鞠花の頬に触れる。
「──……俺じゃ…お前の傷を癒せ無いのか?俺で…お前を支える事は出来ないのか…?」
鞠花が、蓮華の言葉に顔を悲しみに歪ませ、目の前の愛する人から目線を反らした。
「──………もし…あなたの子供を殺したら…私は…あなたを絶対許せない」
「…」
「菫さんを…裏切ったら許さない。…思い出して蓮華……あなたは菫さんを愛していたのよ」
「俺は今お前を愛してるんだ!」
鞠花が、蓮華の手を叩き払うと蓮華から一歩離れる。
「……私の…愛が…あなたを狂わせるなら……私は蓮華を愛する気持ちを…捨てる」
「鞠…」
「……私は…私を愛するあなたを愛さない…絶対」
鞠花の言葉に、蓮華は身を震わせ歯を噛み締める。
「ッ…何で…愛し合ってるのに…一緒になれないんだ!何で!」
「…」
鞠花は蓮華の愛を受け入れず、突き放した。
愛しているのに
愛し合っているのに
二人は
結ばれる道を
行けなかった…
鞠花は全てを捨てて
二人だけで
幸せになろうとしなかった…
「──……いい…天気ね…」
「ああ…」
「家政婦さんは帰ったみたいね…」
「ああ…」
鞠花が、安静にして寝ている椿の傍らに座った。
「…何か…あった?鞠花…」
「……何も…無いわ。椿…」
椿が、涙を流した跡がある鞠花の頬に触れ、優しく微笑んだ。
鞠花は頬に触れる椿の手に、手を重ね、痩せ細った椿を見つめる。
「あなたの傍にいるわ。椿…」
私は椿と一緒にいたい
椿と
一緒に
逝きたい…