《カオル》
受信BOXには大量のその名前が並んでいた。日にちはあの事件の日。
そうか。あの事件の日の夜、俺はカオルとメールをしたんだ。
現実逃避をし続けた記憶が徐々にその扉をあけだした。
心臓があの時のようにバクバクと鳴っていた。
《俺のこと嫌いならそういってくれりゃよかったのに》
いつもはふざけた絵文字で飾られるカオルのメールは、黒一色の地味なものだった。
次のメールを読む。
《好きでもねえのに友達ヅラなんてマジうぜぇから》 次のメール。
《俺のこと大切に思ってるだ?!じゃなんで嘘なんかついたんだよ!》
次。
《おまえとはもう楽しく話すことはできない》
次。
《絶交だ》
あの時の絶望がよみがえり、空気が鉛のように重く感じた。嘘だ。これは夢だ。嘘だ、嘘だ嘘嘘・・・・
携帯を投げ捨て、俺は足を引きずるようにリビングのソファーへと向かった。 涙なんか出ない。出したくない。今泣いたら、真の情けない男として、自分を許せなくなる。自分で最悪なことをしておきながら、カオルのことより、自分のことで一杯になって泣くなんて、誰も見ていなくたって、恥ずかしい。悔しい。情けない。