鉄塔の下だ。藪に覆われかけた山道の一方は山中へと続き、もう一方は高圧電線の巨大な鉄塔の下の、開けた土地へとつながっていた。彼は旅先で知り合った大学生だった。彼の事を愛していた訳ではない。ただ寂しい私の気持ちを温もりで埋めてくれる様な気がした。私を女として見てくれる。それだけで嬉しかった。彼女がいる事は後から知ったが、好きな女性がいると早いうちから聞いていた。つまり私は最初から好きな女にすら自分が入ってない事を自覚していた。でもそれで良かった。私も彼を寂しさを埋める為に利用していたのだから。
「こっ、これっ、いつ終わるの?」私は痛さよりも腹の中の圧迫感と苦しさにやっと息をつく様に言った。自分の連れて行く名所を物珍しそうに眺める私の反応を確認しながら、彼は夜景を見せると言ってここまで辿り着いたのだった。私が、初めてだし…と言うと、俺も初めてだよ。と言っていた。抱かれてすぐそんな事は嘘だと気付いた。彼に取って私は、ある意味売女より安い女だった。恋人のふりをしてやって、優しい言葉の一つでもかけてやれば、喜んで自分の街までやってきて、抱かれる女なのだから。